【校長コラム No.16 老害】
大学時代の恩師は,人生の中で稀に見る怖い人.感情丸出しのヒステリックな怖さではなく,何もかも見透かされている怖さ.研究室には毎年数人の学生が配属されていましたが,一人一人の学生を見極め,個別最適な指導をしていました.研究室に残したい優秀な学生には厳しく指導し,卒業してもらいたい学生には,にこにこ笑顔で,君は社会で活躍する器だと言って卒業させていました.プロセスシステム工学を専門とする研究室.最適化は朝飯前でした.その教授は2003年に定年退官.有名な実力者でしたので様々な大学,研究機関,産業界から是非来てくださいと熱烈なオファーがあったと想像します.ところがです.その教授は,老害になってはいけないと,完全引退.私立大学の教授に就任すればその後7年間も高い給料をもらいながら偉そうにできるのに,です.凡人にできることではありません.なお,老害ということばに嫌悪感を持たれる方がおられますので,補足します.老いることが害,と言っているわけではありません.老いることによる弊害です.年齢や経験で実権を握り続けて,時代錯誤,後進に道を譲れないなどの弊害.昔,母親と議論しているときに,「老いては子に従え」と言ったことがあります.それを聞いていた当時小学校の低学年だった息子は,「お父さんも,老いては子に従うのか」,と聞いてきました.はい,老いては子に従います.だから,しっかり学んでほしいと伝えました.